MEMBER PAGE
経営において、特にサービス業においては人件費がコストに占める割合が大きく、その構成が利益に大きく影響します。具体的には売上高対人件費比率(売上高÷人件費)という数値によってその影響の大きさは現れます。ここでよくある勘違いが、利益と人件費はトレードオフの関係性であるという考え方です。つまり人件費を圧縮すれば利益が上がり、人件費を増やせば利益が減る。普通に断面図で見ればそういう考え方もありますが、ここでは、営業レバレッジという考え方で人件費をとらえます。この考え方でとらえたときに、人件費の増減に係わらず、いかに利益を安定化させることが出来るかという観点でこの両者の関係性を見ることができます。
CVP(Cost-Volume-Profit)分析は、売上高、変動費、固定費の関係を理解し、損益分岐点を見極めるためのツールです。ここで重要なのは、固定費が企業の利益にどのような影響を与えるかという点です。営業レバレッジとは、売上の変動が利益に与える影響の度合いを示す指標です。固定費が高い企業は営業レバレッジが大きく、売上が少し変動するだけで利益が大きく変わります。逆に、固定費が低い企業は営業レバレッジが小さく、売上の変動が利益に与える影響は少ないです。例えば、固定費が大きい企業では、売上が増えると利益が急激に増加し、売上が減ると利益が急激に減少するリスクがあります。一方、固定費が低い企業では、売上が増えても利益の増加は緩やかであり、売上が減少しても利益の減少は穏やかです。サービス業では、人件費が固定費の大部分を占めるため、営業レバレッジの影響が高くなる傾向があります。したがって、人件費の構成とその増減は利益に大きな影響を与えます。つまりは損益分岐点と賃金の関係を理解し、営業レバレッジを効果的に活用することで、人件費を戦略的な投資としてみる視点が重要であるということがいえます。
固定費の割合が高い 変動費の割合が低い→ 売上の増減に対して利益の増減が大きい
固定費の割合が低い 変動費の割合が高い→ 売上の増減に対して利益の増減が小さい
一般的に、社員の人件費は固定費、アルバイトの人件費は変動費として取り扱うのが一般的です。社員の人件費は操業度や売上の増減に関わらず固定額支給される一方で、アルバイトは売上の増減に比例してシフトが増減するためです。しかし、詳細に見てみると、社員の手当には基本給などの固定的な支給と、残業代や成果給など売上や操業度に比例して増減する変動的な支給があります。
例えば、売上の何パーセントといった成果給や営業に関する社員の残業代は変動費に分類することができます。一方、基本給、住宅手当、扶養手当、通勤費のように売上や操業度に関係なく支給される手当は固定費といえます。したがって、成果給や歩合給の割合が大きい給与体系や、需要の増加を新入社員ではなく既存社員の残業代でカバーしている会社は、変動比率が高いといえます。また、賞与も業績に連動している場合は、さらにその変動率は上がります。
このように、売上の増減に対して利益の増減の影響が少ない安定した収益率を目指すか、利益最大化を目指すかの経営方針によって、固定費と変動費の割合を調整することが重要です。
以上のことから数値上の結論では、業績が良い時には固定費、つまり固定的支給が大きい方が利益は最大化しますが、業績が悪い時は大きな赤字となります。逆に変動比率が高い場合は、好業績の時には利益が上がりにくいですが、業績が悪い時にも赤字は出にくく、損益分岐点売上も下がるため、安定的な経営が可能となります。
これはあくまで数値上の話であり、従業員のモチベーション、求人、不利益変更の問題などがあり、自由に給与を設定することはできません。しかし、需要の変動や売上の変動が大きいサービス業にとっては、手当の変動化を図ることが安定的な経営基盤の確立につながることは間違いありません。
経営的側面だけでなく、求人や労務管理などの様々な視点でバランスの良い手当構成を模索していくことが必要です。今回は手当構築の際の一つの見方として、営業レバレッジについて述べました。
どのような疑問ご相談でもお気軽にお問い合わせください。
守秘義務により、外部に秘密がもれることは絶対にありませんのでご安心下さい。