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現在、多くの中小企業において経営上の大きな関心事となっているのが、
エネルギー・原材料価格の高騰(=コストプッシュインフレ)と、
それに加えて政府主導で進む最低賃金の継続的な引上げです。
コストの上昇は、事業継続に必要な経費全体を押し上げ、
とりわけ人件費の増加は企業の利益率に直接影響を与えます。
しかし、すべての業種で商品・サービスの価格を引き上げられるわけではなく、
「価格転嫁ができない」企業ほど、じわじわと経営を圧迫されているのが実情です。
一方で、慢性的な人手不足や従業員の定着に悩む企業では、
一定程度の賃上げが避けられない状況も出てきており、
「コストは上がるが、賃金も上げざるを得ない」という、非常に難しい経営判断が求められています。
こうした状況下において、国(厚生労働省)が用意している制度のひとつが、
「業務改善助成金」です。
業務改善助成金は、簡単に言うと、
「生産性を上げるための設備投資を行い、従業員の最低賃金を引き上げた場合に、その投資費用の一部を補助する」制度です。
対象となるのは、たとえば以下のような投資です。
〇POSレジや券売機、クラウド型勤怠管理システムの導入
〇受発注の効率化や集計業務を省力化するPC・タブレット購入
〇業務フローを見直すための外部専門家への委託費用 など
つまり、「ただ賃金を上げる」のではなく、業務の効率化や省力化を進めながら、結果として従業員に還元するという、前向きな取組みに対して支援される制度です。
【主な支給要件】
〇助成対象となる事業場の最低賃金を一定額以上引き上げること(例:+30円以上)
〇上記とあわせて、生産性向上のための設備投資等を行うこと
〇計画書を提出し、「交付決定」を受けてから購入・実施すること
【助成率・上限額の一例】
・助成率:原則3/4(75%)
・上限額:最大600万円(引上げ人数や金額に応じて変動)
・小規模事業者にはさらに手厚い上乗せ措置あり
申請スケジュールと注意点
本年度(2025年度)の最低賃金の改定は、例年通りであれば10月上旬に施行される見込みです。
それまでに制度を活用するには、以下の点に注意が必要です。
助成金の申請は、原則として“賃金引上げ前”に行う必要があります。
さらに、助成対象となる機器やシステムの購入は、必ず「交付決定通知」を受けてからでなければ対象になりません。
よって、夏頃までには申請準備に着手することが現実的なタイムラインとなります。
また、制度の詳細や書類作成には専門的な知識が求められるため、
社内だけで完結させることが難しい場合もあります。
業務改善助成金は、毎年制度の内容が見直され、要件や補助額も変動します。
「以前に使えなかったから今回も無理だろう」と判断せず、
自社の現状に照らし合わせて再確認することが重要です。
当法人では、社会保険労務士および中小企業診断士の立場から、
本助成金の活用可能性の診断から、計画書作成・申請支援・実行支援まで一貫してサポートしています。
コスト上昇と賃上げに悩まれる企業様は、
本制度を「攻めの選択肢」として、ぜひ一度ご検討ください。
どのような疑問ご相談でもお気軽にお問い合わせください。
守秘義務により、外部に秘密がもれることは絶対にありませんのでご安心下さい。