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2024年7月3日不確実な時代を切り開く(エフェクチュエーションの実践的アプローチ)

従来の「コ―ゼーション」アプローチ

これまでの時代は「コ―ゼーション」と呼ばれる逆算的アプローチが主流でした。例えば、年商1億円の目標を掲げ、その目標を達成するための最適な方法を後から決めるという考え方です。目標を設定し、その達成手段を検討する思考法は、予測可能な市場では一般的であり、多くの企業がこの方法で目標や予算、事業計画を策定しています。
しかし、現代は不確実性が高まり、不測の事態が頻繁に発生します。そのため、従来のコ―ゼーション的なアプローチでは対応が難しくなり、予測不能な環境で計画を立てることが困難となっています。

新たな思考プロセス「エフェクチュエーション」

このような時代に注目されているのが「エフェクチュエーション」という思考プロセスです。エフェクチュエーションとは、優れた起業家に共通する思考プロセスや行動様式を指し、インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が提唱しました。彼の著書『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』で、これまで一般化されていなかった起業家の思考を体系化し、学習可能なものとしました。
エフェクチュエーションは、目標から逆算するのではなく、今ある手段をベースにスタートし、それを使って何ができるかを考える思考プロセスです。従来のコ―ゼーションが未来を予測する前提で成り立っていたのに対し、エフェクチュエーションは状況を臨機応変に判断しながら未来を切り開く考え方です。この思考法は経営だけでなく、人事労務などさまざまなシーンで有効です。

エフェクチュエーション5つの原則

エフェクチュエーションの考え方は、限られた経営資源で効率よく不確実な市場や労働環境の中で最大の効率を追求する中小企業に最適です。日々の不確実性の中での意思決定に強みをもたらします。以下に、エフェクチュエーションの5つの原則とその労務管理への応用例をご紹介します。

手中の鳥の原則

手持ち資源、すなわち「知識」「能力」「スキル」「人脈」などを基に行動を開始するという原則です。目標から逆算して資源を集めるのではなく、手持ちの資源で何ができるかを考え、実現しうる結果をデザインするという思考です。
例えば、スキルマップなどによって社員の既存の知識やスキルを見える化、柔軟な役割配置やプロジェクトの立ち上げ、社内教育の充実により即戦力を育成して、組織のパフォーマンスを向上させることなどが該当します。

許容可能な損失の原則

許容できる範囲の損失(時間、お金、労力)を算出し、そのラインを超えないように行動することで、ハイリスクを避け、生存可能性を高めつつ、試行錯誤を重ねて前進するという現実的な原則です。
例えば社員のプロジェクトや役割において、時間や労力の許容可能な損失ラインを設定し、それを超えないように管理することで、無理のない範囲での成長と成果を追求し、組織の安定性とパフォーマンスを向上させることなどがあります。

クレイジーのキルトの原則

異なる大きさ、形、色、柄の布を縫い合わせるクレイジーキルトのように、多様な相手と柔軟にパートナーシップを築き、資源を拡大し、リスクを分散しながら価値を創出するという原則です。
例えば社員の多様なスキルや背景を活かし、異なる部署や外部パートナーとのコラボレーションを推進することで、組織全体のリソースを最大限に活用し、新しい価値を生み出すとともにリスクを分散させることなどが挙げられます。

レモネードの原則

この原則は、アメリカのことわざ(When life gives you lemons, make lemonade.人生がレモンを与えたときには、レモネードを作りなさい。)がもとになっています。少しわかりにくいのですが、要は「予期せぬ出来事を機会として利用する」という思考を表現しており、予期せぬ出来事を機会として利用し、柔軟に計画を調整することで、状況に応じて最善の結果を導き出すという思考です。
例えば、社員が直面する予期せぬ変化や課題を新たな機会と捉え、柔軟に対応できる環境を整え、状況に応じた研修や支援を行うことで、組織全体の適応力と成長を促進した利することが挙げられます。

飛行中のパイロットの原則

飛行中のパイロットはさまざまな計器類によって常に状況をモニタリングしており、このことが飛行機の安定飛行につながっています。経営も「未来は予測できない」という前提に立ち、安定飛行を維持するように、経営も未来の予測が困難な中で、現状を常に監視し、適切に行動をコントロールすることが重要です。
例えば、社員のパフォーマンスや状況を定期的にモニタリングし、フィードバックを提供することで、常に適切な行動が取れるようにサポートし、組織全体の安定性と適応力を高めることなどが該当します。

まとめ

エフェクチュエーションは、不確実な時代に適した新しい経営や人事労務の方法です。従来の目標から逆算する方法(コ―ゼーション)とは異なり、手持ちの資源を活用して柔軟に対応します。目的より手段、未来の予測より現在のコントロールにシフトした考え方です。エフェクチュエーションの5つの原則を実践することで、企業は変化に強くなり、持続的な成長を実現できます。このアプローチを導入することは、組織も不確実な未来に備え、成功への道を切り開くことができるヒントとなると思います。

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